日本美術の特性を国際的な視点から考えた時、いったい何が残るのでしょうか。外国から見た日本美術を代表するものといえば、漆器に代表される工芸品、尾形光琳に代表される装飾的な絵画、また印象派にも影響を与えた浮世絵版画などがまず挙げられます。しかし、戦後国際的に初めて認められた日本美術は、日本画でも油彩画でもなく版画でした。
1955年のサンパウロ・ビエンナーレ、1956年のヴェネチア・ビエンナーレで棟方志功が大賞を受賞しました。それに続き、菅井汲や池田満寿夫らも国際的に活躍しました。
技法的にもシルクスクリーン、コラージュなどの版画が主流になりました。また版画の特徴として同時に複数製作するという創作姿勢も見直され、一点制作に徹する作家も増えてきています。
本展では江戸時代の浮世絵版画、大正期に確立した創作版画、さらにはアンディ・ウォーホル、サム・フランシス、ジム・ダインなどの海外作家の作品も同時に展示いたします。ぜひこの機会に、版画表現の持つ可能性をご覧いただければ幸いです。