本展「石内都展 ひろしま/ヨコスカ」は、国際的に活躍する写真家・石内都の初期から現在までの軌跡に、東京初公開の新作『ひろしま』を加えた構成で、彼女の仕事の全貌を紹介し、検証する企画です。 略歴を見ていただいてもお分かりになるように、石内都氏は、1947年、群馬県桐生市に生まれ、1953年に横須賀に転居、1966年の多摩美術大学入学を機に横浜に移住、大学中退後、東京に住み始めます。
現在までの彼女の作品を、ここでは大きく三つの時期に分けてみましょう。
第一は、初期三部作として知られる「横須賀ストーリー」、「APARTMENT」、「連夜の街」のシリーズで、1976年から撮影されたものです。 「絶唱、横須賀ストーリー」展の会場写真からもわかるように、「絶唱、横須賀ストーリー」は、両面テープで展示しましたが、展示翌日には多くの作品がはがれて落ちていたために、押しピンでの展示となりました(現在、横浜美術館蔵)。次の展示から、木軸パネルに水張りして発表、終了後、パネルを次の展覧会に使いまわすために、その写真を切り離していました。今回の目黒区美術館での展示では、アトリエで眠っていた、当時のプリントの出品が可能となり、初期三部作は、ヴィンテージ・プリントで構成いたします。当時の石内が、自宅で憑かれたようにプリントし続け、現在、ヨーロッパで「Japanese black」と高く評されているプリントがいかなるものか、また、展示についても、当時の発表に近い形式でご覧いただきます。