19世紀末に創刊された美術雑誌『パン』や『ユーゲント』、そして1920年代のバウハウスのグラフィック・デザインは、その当時から日本でもよく知られていました。しかしながら不思議なことに、ドイツにおけるグラフィック・デザインの展開、とりわけポスターの歴史をひもとく展覧会は、これまでわが国で大々的に開催されたことがありませんでした。
これを踏まえて、本展では、19世紀末の「絵画的ポスター」から、写真表現を取り入れた1930年代初頭の斬新な事例まで、ドイツに花開いた近代ポスターの歩み、その特質と魅力を、国内外のコレクションから精選したポスター、チラシ、雑誌、書籍、絵葉書など170点余の名作によって紹介します。
5つの章から成る展覧会の最初の見どころは、象徴主義や分離派など、世紀末美術の影響を色濃く受けたドラマティックな絵画的表現によるもの[1890~1900年代]、その流れを受けて、より高い芸術性を追求した事例、そして、1900~1910年代に花開いた、宣伝される事象を背景から際立たせ、平明な文字列と組み合わせたドイツ独自の広告スタイル「ザッハプラカート」[即物的ポスター]の数々です。