ハンガリー出身で長野県千曲市にアトリエを構えるアーグネス・フスは、リボン状に延ばした薄い粘土を巻きつける独特の作風で知られる女流陶芸作家です。粘土に布のようなやわらかい風合いを与え、カラフルに色づけする造型感覚は、従来の日本の伝統陶芸にまったくみられない斬新さにあふれています。彼女が手がける渦巻き(スパイラル)の造形には求心力と遠心力の双方が感じられ、始まりも終わりもない無限の世界を象徴しています。また粘土の帯が何かを縛りつけ、その帯が解けて中から何かが出てくることは、「束縛」と「解放」をも意味します。渦巻きが織り成す世界に託された示唆に富む作者のメッセージをご高覧ください。