人形といえば、愛玩・観賞用と思われる方も多いでしょう。しかし、「俑」と呼ばれる中国古代の人形は、死者に捧げる副葬品でした。秦の始皇帝陵付近で出土した兵馬俑は、そのもっとも有名な例です。秦につづく漢や北朝(5~6世紀、華北に拠った諸王朝)でも大量のやきものの俑が作られました。この時代の俑は、等身大だった秦の兵馬俑に比べて、ずっと小さく、侍従・武士・演奏者などの役割や性別によって、姿形や表情の違いがより豊かに表現されるようになりました。番犬・豚などの動物や、牛車の俑も盛んに作られます。この特集陳列では、漢・北朝の俑の多様性と、その背景にある「あの世の暮らしまで積極的に楽しもう」とする当時の人々の活力を感じ取っていただきたいと思います。