オノレ・ドーミエ(Honore DAUMIER 1808-1879)は、1808年にフランスのマルセイユで生まれました。幼い頃にパリに移り住み、家計を助ける傍ら次第に絵画の道に入っていきます。やがて風刺雑誌『カリカチュール』を主宰していたシャルル・フィリポンに見出され、その才能をリトグラフ(石版画)で開花させました。ジャーナリズムが勃興しはじめた近代都市の形成期に、類い稀な記憶力と持ち前の描写力で活気に満ちた19世紀のパリの人々を描き、風刺画家として人気を博したのです。40年にも及ぶ画業のなかで、ドーミエが遺した作品はリトグラフだけで4,000点以上にのぼります。それらは時代を映す鏡となり、今もなお瑞々しい魅力を放っています。
生誕200年にあたる本年、世界でも有数のドーミエ・コレクションを誇る当館では、2部構成でその作品をご覧いただきます。第1部では卓越したデッサン力と観察力に焦点を当て、パリっ子を魅了したリトグラフによる諷刺画の代表作を紹介します。第2部では油彩、彫刻、水彩と多彩な活躍を見せた芸術家としてのドーミエを再考するとともに、戦前に国内で公開された油彩や『白樺』『中央美術』など文芸雑誌の紹介記事等をとおして日本での受容史を検証します。
時代と共に人々の心を捉えてきたドーミエの痛快で滋味豊かな魅力に、改めて惹き付けられることでしょう。現代とも相通じるドーミエの芸術世界をどうぞお楽しみください。
第1部:8月30日~11月24日
第2部:11月29日~12月21日