歌川広重は葛飾北斎とともに、浮世絵版画の風景がを大成した画家として世界的に知られています。寛政9年(1797)に定火消役同心という武士の家に生まれながら、美人画の絵師歌川豊広の門に入り、歌川派の絵師として、美人画や役者絵などの制作から活動を始めます。天保期(1830~1844)の初め、横大判の風景画シリーズ、一幽斎がき「東都名所」を発表して、風景画家としての人気を得、東海道の街道風景を描いた「東海道五十三次之内」では爆発的な売れ行きを示し、その地位を不動のものとします。その後も、広重は江戸の名所絵シリーズ、木曾六十九次、近江や京、大坂の名所絵シリーズなど、数多くの風景版画を制作しています。広重が描いた世界は叙情感にあふれ、自然とともに人々が生きる姿が描かれており、見る者に感動をあたえ、今もなお、多くの人々を魅了してやみません。本年は広重が安政5年(1858)に62歳で没してから、150年の節にあたります。これを記念して、当館が所蔵する広重作品から、「東海道五十三次之内」の全作品をはじめ、代表的な風景版画の作品155点を選んで、「江戸名所絵」「街道絵」「諸国名所絵」「名所江戸百景」の4つのセクションに分けて、広重の魅力を紹介します。