近年、当弥生美術館は、乙女の聖地、乙女の殿堂と称されることが多くなりました。それはなぜでしょうか?
当館は、高畠華宵や蕗谷虹児、加藤まさを、中原淳一などが描く、抒情画と呼ばれる少女画を多数所蔵しております。大正~昭和期の少女雑誌の表紙・口絵・挿絵などに描かれたその少女画は、当時の乙女達を魅了し、イコンにおけるマリア像のように聖化され、愛されました。
潤んだような大きな瞳、花びらのように愛らしい唇、時にはかなく可憐に、時に艶やかに描かれた美しい少女達。大正ロマンと昭和モダンを表出したその少女画は、数十年を経た現代の乙女達をも魅了し、心ときめかせています。
本展では、竹久夢二に始まる大正~昭和期の挿絵画家の作品から、少女雑誌に花開いた乙女達にとってのイコン(少女画)の魅力をご紹介いたします。
また、イコンとして昇華された各画家の少女画の特徴を図像学(イコノグラフィ)的にとり上げ、社会的・文化的背景を見つめながら大正・昭和期の乙女像を浮き彫りにいたします。
イコン画家としてとりあげる画家は、戦前期の竹久夢二や高畠華宵、蕗谷虹児、加藤まさを、須藤しげる、松本かつぢ、中原淳一、深谷美保子、不破俊子を、戦後の代表的な抒情画家として中原淳一、藤井千秋、藤田ミラノ、内藤ルネ、佐藤漾子、池田かずお、勝山ひろし、松本昌美らを予定しております。
*イコンとは、キリスト教、とりわけ東方正教会の影響下において板絵やフレスコ画等に表現された宗教的な人物や事件などの聖画像を指します。