工芸にはさまざまな装飾が施されています。工芸に見られる装飾模様は、長い歳月の中で育まれた歴史を背負っており、そこにはいろいろな意味がこめられています。装飾模様は器物を飾り、私たちの想像力をかきたててくれるとともに、さまざまなメッセージを伝えているのです。
かつて近代の工芸家にとって、器物をどのように装飾するか、というのはきわめて重要な課題でした。ところが、装飾を排した無機的なデザインが浸透するとともに、工芸家にとって、装飾は、もはやそれほど重要な課題とはみなされなくなってしまったかの感があります。しかしその一方で、近年、過剰なまでに装飾を施した工芸作品を制作する工芸家があらわれています。装飾への欲望、すなわち装飾することそれ自体が工芸制作の原動力となっているのです。こうした現象というのはラインストーンできらびやかに飾られたデコ電(デコ携帯)の出現ともパラレルの関係にあるようにも思われるのです。
今回の展覧会では、大人とこどもが一緒になって「装飾(デコ)」に注目することによって、その魅力を発見していただきたいと思います。装飾(デコ)は、工芸を読み解く手がかりであると同時に、これまで日本人が日本の風土のなかで育んできた美意識を示しているのです。