竹久夢二(本名茂次郎)は、1884(明治17)年岡山県に生まれ18歳で上京。苦学しながら新聞や雑誌にコマ絵を投稿して頭角を現します。
夢二という筆名の作品は、22歳のときからですが、彼の描く絵には明治末から大正、昭和初期の時代に生きた、庶民への深い共感、女性や子どもへのやさしいまなざしが、あふれています。
この時代は、日本が近代社会へと急速に変貌していく激動のときにあたります。都市生活者の急増、モダンな生活様式の普及、近隣諸国への経済的・軍事的進出など、光と影の交錯するなかで、夢二は当時の若者たちに圧倒的な支持を得た斬新なデザインの本の装丁、広告画、楽譜の表紙絵を数多く手がけ、また弱き者への共感あふれる絵画を描くとともに、詩や文章を残しました。
本展では、屏風や軸装の肉筆日本画をはじめ、版画、絵葉書、装丁原画と書籍、セノオ楽譜の表紙絵などに加え、「永遠の女性」彦乃への愛を綴った直筆日記、親しい人々への書簡、没後資料などまで、貴重な個人コレクションに初公開作品を含め約170点を展示して、今もなお色あせることのない竹久夢二の魅力にせまります。