マドリード出身の画家ホセ・マリア・シシリア(1954~)は、1980年代にスペイン現代美術界にデビューしました。荒々しい筆致と大胆な構図で、身近な題材を描いた初期の作品は、当時の国際的な新表現主義の流れに位置づけられますが、1990年頃から、蜜蝋(ミツバチの巣を構成する蝋)の中に日常的な物事のイメージを閉じ込めた作品を制作するようになります。1990年代の半ばには、蜜蝋に油彩で花を描いた「花」「衝立・小さな花々」などの連作に着手しました。この花のシリーズで国際的な人気を得たシシリアは、スペイン美術の枠を超えた若い世代を代表する存在として評価され、1997年にはマドリードのソフィア王妃国立美術センターでも個展が開催されました。現在は、パリとマヨルカに拠点を置き、世界的に活躍しています。
生命や宇宙の象徴である「花」が大画面を覆うシシリアの絵画は、見る者の五感をダイレクトに揺さぶる神秘的な光と美しさを湛えています。本展覧会では、花や蝶をモディーフとした1998年から現在の最新作まで、およそ10年間の仕事を、蜜蝋を支持体とした油彩(約40点)、和紙に描かれたドローイング(約40点)、その他、立体作品や映像作品により、あますところなくご紹介します。本展覧会は、国内の美術館においてシシリア初の個展となります。