現代の洋画壇を代表する奥谷博の回顧展です。奥谷博は1934(昭和9)年、高知県宿毛市に生まれました。東京藝術大学で林武に師事し油彩画を学び、抽象絵画が時流であった当時から、一貫して具象絵画を描き続けています。大学卒業後、1964年母校の助手となってフレスコ画の制作に取り組んだことを機に、絵具を厚塗りしていた技法から薄塗の表現に転換を図りました。作品が評価され始めた1967年、第一回文化庁在外研修員としてフランスに留学し、西洋絵画を多く見て伝統を学んだ奥谷は、1971年から3年間、再びフランスに滞在して異文化として西洋の絵画の根幹に触れ、時空を超えた様々なイメージを強い色彩の対比で描く画風を確立しました。
奥谷は多くの受賞暦に加え、昨年、文化功労者として顕彰されました。この度の展覧会では、奥谷が東京藝術大学受験のために描いた「二十歳の自画像」から2007年の最新作「自画像と自寫像―LePuy」までの油彩画57点と素描による、約半世紀におよぶ奥谷博の画業を紹介します。