川瀬巴水は、明治16(1883)年東京に生まれ、幼少の頃より絵に興味を抱いて、洋画・日本画を学びました。そして27歳で鏑木清方に師事し、同門であった伊東深水の影響を受けて版画への関心を深めました。
日本の版画は、明治30年代以降、自画・自刻・自摺を主張するいわゆる創作版画が普及し、大正初期からは、伝統的な技法を見直そうとする新版画運動も芽生えはじめます。巴水は、大正7(1918)年に初の版画作品となる「塩原三部作」を発表して以来、新版画運動の流れに乗って伝統的な技法を守りつつ、独自の画風を発展させ、日本だけでなく海外でも高い評価を受けるようになりました。昭和32(1957)年に75歳で没するまで、約40年間にわたって各地を旅し、大正から昭和にかけて四季折々の自然や風俗を描き続けた巴水の作品は、見る人の心に時代への郷愁を呼び、旅へのあこがれを誘います。
川瀬巴水の作品を通じて、木版画の繊細にして力強い美と巴水独自の色づかい、技の世界を、そして時を超えた旅情をご観賞いただければ幸いです。
なお、本展では、約600点と言われる巴水の作品の中から約250点を選りすぐり、前期・後期にわけて展覧いたします(各130点程度)。この機会にぜひ、巴水芸術の真髄をご堪能ください。
前期後期で全作品入れ替わります
前期:9月21日(日)~10月13日(月・祝)
後期:10月15日(水)~11月3日(月・祝)