1938(昭和13)年、北海道小樽市生まれの嶋屋征一は、岩手大学学芸学部特設美術科を卒業後、岩手町立川口中学校に勤務しました。当時、岩手町では、画家・齋藤忠誠(故人)を中心に、町の美術愛好家らが集まり、美術団体「エコール・ド・エヌ」を結成し、デッサン会などの活動をしており、嶋屋はじめ岩手町に赴任した美術教師たちがこの団体の一員となったことで、「エコール・ド・エヌ」の活動は一層充実し、岩手町のみならず各地へ会員が増える要因ともなりました。嶋屋は、「エコール・ド・エヌ」事務局を長くつとめ、また、1982年には岩手県立盛岡短期大学教授、1998年からは岩手県立大学教授として長く教育にも携わってきました。
自身の作品は「空間」をテーマにしています。初期の「宙」シリーズ、そこから展開し、見えない空間を意識させる「スペース・白」シリーズ、ステンレスやアクリルミラーを使った「形相」シリーズでは物体の外見と中身や無限の空間が追求され、やがて鏡面に映りこむ場をとらえた写真作品「場景」のシリーズが始まります。また、外空間に対する追求のみならず、身体という内空間の流動や音の響きをテーマにした「Image-Sound」シリーズなど、様々な手法で多方面から「空間」というテーマを探っています。この展覧会では、岩手町立川口中学校勤務時代の初期作品から最近作までをたどります。