今日文化財の調査は、博物館にとって欠かせない活動のひとつです。草創期の東京国立博物館にとっても古社寺や華族の所蔵品調査は、陳列品収集のためにも重要な事業でした。明治五年(1872)、このような文化財調査が初めて全国的な規模で行われました。これは当時の干支から「壬申検査」と呼ばれ、同年開催の文部省博覧会の出品に備えるものでしたが、正倉院の開封をはじめ精力的に古社寺の調査が行われました。今回の特集では、当館に伝来する当時の資料を展示し初期文化財調査の様子を紹介するとともに、あわせて文化財の保護についても考えてみます。