湛睿(1271~1346)は、鎌倉末期から南北朝時代の激動のなかを生き抜き、晩年に横浜市金沢区にある称名寺の第三世長老となった学僧です。いまでこそ、知られざる人物となってしまった湛睿ですが、その生涯は江戸時代の「高僧伝」にも記され、特に、戒律と華厳という仏教研究のなかでも難解な学問に長けた俊英でした。また、鎌倉幕府滅亡の混乱のさなか、下総・東禅寺(千葉県香取郡)の住持を引き受け、さらに金沢北条氏という大檀越を失い衰退の危機に直面した称名寺の住持となるなど、経営者としての敏腕さを持ち合わせていました。
本展示では、湛睿の波乱にとんだ生涯の軌跡を、重文「称名寺聖教」のうち著作や手紙をはじめとする文化財から探ります。
乱世に生きた学僧の一代記です。