明治から大正期にかけて、『風俗画報』などの雑誌や新聞の挿絵、木版画や肉筆作品を幅広く手がけ、風俗画・美人画の分野で独自の活躍を見せた画家、尾形月耕(1859-1920)。師を持たず、ほぼ独学で絵を習得した彼は、着実に画家としての経歴を積み重ね、時代を代表する人気画家となりました。
本展では「美人花競」や「花美人名所合」といった、女性と花を取り合わせたシリーズ、故事伝説に取材した「月耕随筆」シリーズなど当館所蔵の青木コレクションを中心とした作品を展示いたします。あわせて月耕の弟子である月岡耕漁らによる能画も展示し、月耕が弟子に与えた影響を探ります。
月耕描く、たおやかで優しげな風情の女性像は、少女から大人まで幅広い層の人々に愛されましたが、当時の人気に比して、現在、彼の名を知る人は決して多いといえないでしょう。皆さんにとって本展が、風俗画家尾形月耕の知られざる魅力を発見する機会となれば幸いです。