豊かな自然に恵まれた日本において、古くから日本人は四季折々の自然の美しさを大切にし、特有の美意識を育んできました。日本人が四季を通して培った細やかな感性は、花鳥風月、雪月花といった自然現象を取り入れた多くの作品を生むこととなりました。特に秋は澄み切った空、名月、紅葉といった題材に事欠かず、芸術家は好んで歌や絵画に取り入れ、数多くの名作を残しています。
小林古径≪しゅう采≫、奥村土牛≪あけび≫、速水御舟≪柿≫などに描かれる秋の果実。伊東深水≪紅葉美人≫や上村松園≪夕照≫で表現される秋の装いの美人図。そして凛と咲く菊の色が鮮やかな酒井抱一の≪菊小禽≫、横山大観≪秋の色≫や東山魁夷≪秋彩≫の紅葉の自然美。本展覧会では、当館所蔵の作品の中から秋を感じさせる作品約50点をご覧いただきます。
木々が彩られていくこの時期に、展覧会を通して絵画の中に表現された深まりゆく秋をご堪能いただければ幸いです。