「超俗の人」「画壇の仙人」と呼ばれた守一は、1880(明治13)年、岐阜県中津川市付知町に生まれました。東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科では、黒田清輝、藤島武二の指導のもと、青木繁や児島虎次郎らと共に学びます。そして1977年に亡くなるまで約70年にわたって絵を描き続けました。守一が好んで描いた題材は、子ども、小さな虫、庭に咲く花、猫など普段の何気ない風景です。これらを見つめ続ける事により創りだされた「かたち」と、持って生まれたまなざしが決意する「いろ」。この二つを駆使して守一は独自の様式を展開しました。「守一様式」では、ぎりぎりまでそぎ落とした線で描き続きだされたかたちと明快な色彩が、絶妙な調和をみせています。
本展で熊谷守一の没後30年を記念し、初期から晩年にいたる120点の油彩画に加え、日本画、書、あわせて160余点をご紹介いたします。この機に「いろ」と「かたち」にこだわり続けた、画家の歩みをご高覧ください。