「うしお」の名から「ギュウちゃん」の愛称で呼ばれる篠原有司男と、「チュウさん」の呼び名で親しまれる榎忠。二人は1960年代から現在まで、型破りな力強い表現活動によって若い世代に多大な刺激を与えつづけているアーティストです。彼らは取り澄ましたモダンアートの世界にとらわれることなく、きわめて自由な表現を展開してきました。世代や活動拠点、表現形態も異なる二人ですが、自らの衝動や欲望につき動かされた、生々しい肉体性と過剰なまでの物質性を特徴とする彼らの作品は、安穏とした日常に眠る我われの本能を強く揺さぶります。
今回の展覧会では、篠原、榎それぞれが、豊田市美術館の展示空間にあわせて制作した新作を発表します。篠原は、高さ8m、幅延べ50mにわたる超ド級の大壁画の部屋を設けると共に、全長8mほどのダンボール製オートバイ彫刻を展示します。一方の榎は、総重量10トンに及ぶ金属パーツを組み上げた作品や、「パトローネ」と呼ばれる写真フィルムの円筒形容器14トンを使用した大掛かりなインスタレーションを創りあげます。
空虚で閉塞的な時代の空気を吹き飛ばすほどの熱くユニークな二人の表現によって、我われは次代を切り拓く勇気と可能性を見出すこととなるでしょう。