河口龍夫の作品をこのたび、当館と名古屋市美術館との同時開催というかたちで、その全貌を紹介する展覧会を行うことにより、混沌とした時代に私たち自身が作品のひとつひとつを通じて、日常の出来事や社会環境を見つめなおすきっかけを作ることとなるでしょう。
今回の展覧会では、私たちが日常生活の中で何気なく見過ごしている事象、たとえば、地球の営み、エネルギーの流れ、時間の変化といったものを視覚的に表現します。また、植物を鉛で覆う作品などは、存在と不在、「見えないもの」と「見えるもの」を対比させながら、人間と物質との間の「気配」や「存在」そのものを感じさせてくれます。
なぜ光を発しているのか?なぜ闇の中の作品なのか?なぜ鉛で覆われているのか?など次々に作品は私たちに問いかけてきます。「なぜ」が見えてきたとき、私たちと作品との「対話」が導かれることでしょう。
作家は、生まれ育った神戸での展覧会にあたって彼自身のこれまでの仕事のエッセンスを凝縮した展示内容に構成するとともに、会期中、講演会やワークショップを行い、長年の教育者としての実践経験をもとに、若い世代に現代美術の可能性を伝えていきます。