絵本の挿絵は、私たちにとっておそらく意識的に触れる初めての「絵画」の世界です。特に、まだ読み書きのおぼつかない幼い子供たちにとっては、大人たちが読み聞かせる語りと、挿絵こそが、その絵本の印象を決定付けると言っても過言ではないでしょう。だからこそ絵本挿絵は、常に高度な芸術的完成度が求められるのです。
昨今の絵本ブームにも見られるように、読者層が子供たちだけではなく、幅広い年齢層に広がるにつれ、絵本挿絵の表現の多様化が進んでいます。また近年では、油彩画や水彩画、版画といった伝統的な技法ばかりでなく、CGをはじめとした最新の技術を応用したものも見受けられ、絵本挿絵を取り巻く環境は目まぐるしく変化してきています。
イタリア北部の歴史都市・ボローニャでは、毎年春に世界唯一の児童図書見本市「ボローニャ児童図書展」が開かれます。この児童図書展に併設された「イラストレーションコンクール」は、絵本製作を目指すイラストレーターたちの発表の場として重要な位置を占め、また絵本挿絵の最新の動向を知らせる公募展としても高く評価されています。このコンクールは、5点1組という応募規定を守れば、プロ・アマに関わらず審査を受けられる公募展で、既に絵本として出版されているもの、未発表のものも平等に扱われます。
今年度は、世界58ヵ国から2653組のイラストレーターたちから応募があり、厳しい審査の結果、日本人17名を含む23ヵ国85組のイラストレーターたちが入選となりました。また、特別展示として、2006年に子供の本のノーベル賞ともいわれる「国際アンデルセン賞」を受賞した、ドイツのイラストレーター、ヴォルフ・エァルブルッフの作品を展示します。