美術館では、4月19日に逝去された高橋節郎氏の追悼企画展を行います。
現代的な感覚を持ち、絵画的で芸術性豊かな独自の漆芸術の世界を創出し続けた高橋節郎(1914-2007)。生涯の友・漆との出会いは、東京美術学校(現東京藝術大学)に入学し工芸科漆工部に進んだ時でしたが、それは同時に、同部で指導者を務めていた偉大なる先達、松田権六・山崎覚太郎との出会いの瞬間でもありました。
松田権六(1896-1986)は、伝統を引き継ぎつつも蒔絵の現代化にも取り組み、高い技術力で漆の特質を活かし切った、華麗にして堅牢、格調高い作品を制作しました。伝統工芸技術の伝承と発展を図り、文化財や古典作品の研究や修復にも尽力、多くの後継者を育てるなど、漆工芸界に与えた影響・功績は多大でした。
山崎覚太郎(1899-1984)は、当時開発が進んでいた色漆を多用し、主に動物をテーマに、彩り豊かで明るい作風の平面作品を多く発表しました。工芸の現代化や美術界における地位確立のために精力的に活動し、新しい美術団体を組織して、作家の自由な発想や美的表現を第一義とする工芸美術の分野の開拓・発展を促す旗手となりました。
今展では、伝統と革新という両輪を支え牽引し、ともに漆芸界の発展に寄与し続けた松田・山崎両氏と、二人の巨匠の教えに大きな影響を受けて芸術家としての一歩を歩みだし、生涯を漆芸の道に捧げた高橋の作品を一堂に展示し、漆の可能性の探求と独自の美の世界を創造することにかけた活動の姿を、作品を通してご紹介します。
皆さまのご来場をお待ちしております。