この展覧会は、佐賀・鍋島報效会所蔵の作品に構成しています。鍋島報效会は、江戸時代においては佐賀藩35万石の藩主、近代では侯爵となった鍋島家より作品の寄贈をうけ、その研究・保存・展示活動を行っています。
鍋島家に伝わった道具の数々は、幾度かの災禍に遭いながらも、その難を潜り抜け、作品の大半は散逸することもなく受け継がれました。
この大切に使われ、守り伝えられた御道具類は、大名家に相応しい品格が見られ、江戸時代の生活文化の格と広がりを示します。とりわけ染織品は、江戸時代の伝統と格式を大切に調和させた作品であり、刺繍に彩られた小袖は、女性たちの華やかな生活を彷彿させます。また、維新後には「鹿鳴館時代」に象徴されるように欧風化という時代の流れの変化の中で、時代を先取りした最先端の服飾としてのドレス類を身にまとうようにもなります。
日本の伝統文化を受け継ぎつつも、新進の気風を柔軟に取り入れる様は、江戸時代の小袖で仕立てられた鹿鳴館時代の夜会服という他にその例を見ない貴重なからも感じられます。
なお千駄ヶ谷の国立能楽堂展示室においては、鍋島家伝来の能装束を中心とした展示が行われています。二つの展示をご覧になり、「大名から侯爵へ」の名の通り、時代を越えて受け継がれてきた鍋島家の文化の多様性を楽しんで頂ければと思います。