古来、空や水、花や鳥など自然にあらわれる「青」を絵画にあらわすことは簡単なことではありませんでした。しかし、1704年ベルリンにおいて合成顔料のプルシアンブルーが偶然発見され、西洋の画家たちは、合成の科学顔料によって青を表現する自由を手にいれはじめるのです。
江戸時代、日本に持ち渡られたプルシアンブルーは、謎に包まれた新しい青として注目され、洋風画法とともに伝えられ、蘭画を象徴する青色の地位を確立します。展覧会では、科学的分析によってプルシアンブルーの使用が明らかとなった平賀源内、佐竹曙山、小野田直武、若杉五十八、司馬江漢、亜欧堂田善らの「西洋の青」による作品と、藍・群青など日本の伝統的な青を用いた作品を対比し、さまざまに工夫して多用な青の表現を見せる近世の画家技と完成に注目しながら、「西洋の青」受容の過程を追跡します。
浮世絵研究においても、プルシアンブルーは北斎の冨嶽三十六景に用いられて以降、浮世絵の風景表現を一変させる契機となった画期的な顔料として特に注目を集めています。この頃より、プルシアンブルーは「西洋の青」から新しい日本の青として広く受け入れられていきました。
展覧会には、江戸時代に武雄(佐賀県)のお殿様が用いた貴重な絵具や道具類、輸入の実態を知ることができる貿易関係の資料も出品されます。プルシアンブルーをめぐる各分野の最新の研究成果を、作品を見ながら見ていただける催しです。