豊かさと自由の象徴ともいえるアメリカ、その代表的な大都市であるハリウッド。豊かさや自由を光だとすれば、一方には飽食や、限りない自由や快楽に蝕まれる人間がいるという影の部分も顕在化しています。作者は、そうした影の部分を「甘い地獄」~ハリウッドという現代のパビロンで、限りなく許される自由に溺れ、人間が堕ちていく~と、鋭い視線を向けています。
彼女は、ハリウッドのアパートに暮らし、街の空気、匂いなどを、自らの身体、肌で感じ取りながら、アメリカ社会の陰を切り取っています。スナップショット的な、粒子の粗い、時にはブレがある写真ですが、それが逆に作者固有のアグレッシブな表現となっています。文明や物質社会への鋭い批評精神をもった作品で、表現者としての鋭い視点や患想性が光る秀作です。