平安時代末期以降、壺・甕(かめ)・擂鉢などの日用品を主に生産していた丹波でも、茶の湯が流行した桃山時代になると、茶入・茶碗・花入・水指(みずさし)などの茶の湯に用いるうつわを作るようになります。
慶長から元和年間(1596~1624)にかけては、備前焼や伊賀焼など同時期の他窯製品と類似した、歪みを伴った力強い造形の水指や花入を生産しました。また元和から寛永年間(1615~1644)頃には、大名茶人小堀遠州(こぼりえんしゅう)によって採り上げられた耳付茶入「生野(いくの)」(湯木美術館)に代表されるように、茶入や端正な筒茶碗なども新たに作られるようになったと考えられます。
当館の所蔵品は、全但(ぜんたん)バス株式会社社長の田中寛氏(たなかひろし・1904~81)が収集した、「田中寛(たなかかん)コレクション」が母体となっています。田中氏は茶の湯に強い関心をもっていたことから、コレクションには丹波焼の茶陶も含まれています。本展では、当館のコレクションのなかから、丹波焼として伝えられた茶陶を中心に、江戸時代後期の京都で活躍した陶工永楽了全(えいらくりょうぜん・1770~1841)が、丹波焼の船形花入を写した珍しい作品を加え、約30件をご紹介します。