加藤裕三(1950-2001)は、1987年から1993年にかけて「100円グリコ」のおもちゃづくりにかかわり、約260点の「おまけ」(食玩)をデザインしました。グリコのおもちゃは、現在の「おまけ」(食玩)ブームを作りだしていますが、その80年の歴史に大きな転機をもたらしたのが加藤裕三です。 高校卒業後、木彫作家の峯村徹氏に弟子入りした加藤は、独立後「木でつくるおもちゃ」を生涯のテーマとし、幼稚園の遊具などを制作していたころ、グリコのおまけのデザインを依頼されました。彼が手がけた作品は「動くおもちゃシリーズ」として大ヒットしました。また、その一方ではりがねアートを手がけたり、西アフリカのドゴン族の子どもたちの学校を建設する活動にも関わっています。 今回の展覧会は、グリコのおもちゃからカラクリ人形まで、作品とともにクリエイティブノートも展示し、加藤裕三の多彩な作品世界を振り返ります。彼が子どもたちのために制作した“動くおもちゃ”にこめられたメッセージを伝えるとともに、彼の遊びの世界をお届けします。 加藤裕三は、阪神・淡路大震災で被災後、神戸市・有馬温泉の老舗旅館「御所坊」の金井啓修氏との縁で有馬温泉を新たな活動の拠点とし、ミュージアムの創設や教室の運営をめざした矢先、病のため2001年5月5日に亡くなりました。 彼の残した夢のうち、ミュージアム創設は2003年7月「有馬玩具博物館」として実現しました。加藤の作家活動を支えた友人であり、「からくり」作家の先輩である西田明夫氏が館長を引き受け、「カラクリ=オートマタ」を中心に世界のおもちゃを集めています。