美人を描いた絵が「美人画」と呼ばれるようになったのは、明治時代中頃のことですが、その後昭和に到るまで、近代日本画の主要な主題の一つとして、多くの人々に愛され描かれ続けてきました。 培広庵コレクションは、美人画に魅せられた一人のコレクターが、1970年代から今日まで独自の視点を持って蒐集を続けたコレクションです。大正期から昭和初期を中心に、上村松園、鏑木清方、伊東深水は勿論のこと、大阪画壇の北野恒富、島成園、木谷千種。東京画壇からは山村耕花、池田輝方、池田蕉園。その他、北陸を拠点に活躍した紺谷光俊、広田百豊などの珍しい作品も多数含まれています。 このたびの展覧会では、コレクターの全面的な協力を得て、その貴重なコレクション約八十点を一堂に公開いたします。近代美人画の優雅で耽美な世界を、じっくりと味わっていただくまたとない機会となることでしょう。 <展覧会構成> 第一章 東都・江戸の風味を残す美人画 時代は変わっても、江戸で培われた都会的で粋な雰囲気は、美人画にも引き継がれています。 鏑木清方「秋の錦」昭和22年 池田輝方・池田蕉園「春秋図」大正初期 伊東深水「薄暮」昭和15年頃 第二章 京・大阪の伝統 版画よりも肉筆を尊んだ京都、絵に物語性を求めた大坂。その伝統は脈々と受け継がれています。 上村松園「桜狩の図」昭和10年 寺島紫明「湯上り」昭和20年代 樋口富麻呂「粧ひ」大正10年頃 第三章 大阪の画家たち 大阪の画家には京都の画家とはまた違った、独特の雰囲気があります。 北野恒富「願いの糸」大正3年頃 島成園「化粧」大正4年頃 木谷千種「初音」大正後期 第四章 金沢の伝統 加賀百万石の時代から豊かな伝統を持つ地で、画家の感性も育まれたといえるでしょう。 広田百豊「初秋」 紺谷光俊「採果図」昭和5年頃