鈴木信太郎は明治28(1895)年、東京八王子の生糸業を営む裕福な商家に生まれました。跡取り息子として育てられますが病気のために身体が不自由になり、好きな絵画の道を歩もうと15歳で黒田清輝の主宰する白馬会洋画研究所に入所します。大正11(1922)年27歳で第9回二科会に初入選を果たし、以後石井柏亭に師事しながら二科会に作品を発表、徐々に頭角をあらわしました。戦後は二科会の再興に加わりますが、昭和30(1955)年退会して一陽会を結成、晩年まで精力的に制作活動を続け、平成元(1989)年、93歳で逝去しました。
終生杖や車椅子を必要とする生活をおくりながらも、鈴木は奈良、長崎、北海道、伊豆をはじめ全国に赴き、椅子に腰掛けまた地面に座るなどして制作を行い優れた風景画を生み出しました。また花や果物、人形といった身近な題材を独特のフォルムで描き、多彩な静物画を残しています。童心を感じさせるその愛らしい画風は、没後20年近くを経てなお美術愛好家に親しまれています。
本展では、質の高い鈴木作品を所蔵するそごう美術館、大村コレクション、北里研究所、八王子市夢美術館から約100点を紹介いたします。初期から晩年にいたる画業の数々をご鑑賞ください。