アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)は、19世紀後半のフランス美術を代表する画家、素描家として世界的な評価を得ていますが、同時にポスターの分野でも大きな足跡を残しています。彼がポスター作品を手がけたのはわずか10年でしたが、その間に制作された31点の作品は、いずれも斬新な構図、自由闊達な線描、コントラストを生かした効果的な色彩配置、文字と図像との巧みな融合などによって、当時の人物や風俗が生き生きと表現されています。これらは、パリの街角を彩りながら大きな話題を呼び、ポスターの世界に新風を吹き込んだのでした。また単なる宣伝目的としてだけではなく、美術作品としても高く評価され、後世の作家たちにも多大な影響を与えました。
本展は、サントリーミュージアム[天保山]が所蔵するロートレックのポスター全31点を中心に、ミュシャやスタンランら、同時代の作家たちの名品約40点をまじえ、19世紀末から20世紀前半にいたるポスター芸術の華やかな展開をたどるものです。また、2001年にロートレック没後100年を記念して、世界の著名なグラフィック・デザイナー100人がロートレックへのオマージュとして制作した100点の作品もあわせて展示するなど、現代に受け継がれたポスター表現の多様性も効果的に織り交ぜながら、ロートレック芸術の魅力を多角的に紹介します。