稀代の目利きとして知られる青山二郎(1901-79)。東京の裕福な家庭に生まれた青山は、10代半ばから“やきもの”に興味を持ち、まだ一般には評価されていなかった中国古陶磁を求め、「天才的な審美眼」を賞賛されたという逸話を持ちます。20代で柳宗悦が提唱する民藝運動の発足に関与。中国陶磁収集の第一人者であった横河民輔からコレクション図録の作成を委託され、5年の歳月をかけて『甌香譜(おうこうふ)』をまとめあげました。
青山のもとには、小林秀雄、中原中也、大岡昇平、白洲正子といった文化人が集い、通称「青山学院」が生まれました。また、北大路魯山人や濱田庄司など、多くの芸術家とも交流。利休、富岡鉄斎、梅原龍三郎らについての評論を記し、2000点にのぼる装幀も手がけ、新しい美の基準を生み出していきます。しかし、青山にとってはすべてが「余技」。生涯職業には就かず、「何者でもない人生」(白洲)を全うしました。
本展では、青山二郎にまつわる205点の作品を、「鑑賞陶器」「朝鮮考」「骨董」「装幀家 青山二郎とその交流」の全4章に分けて紹介します。青山の眼を通してみた、昭和の芸術、文化の世界をお楽しみください。