2005年-06年、ベルギーのAIR Antwerpenで滞在制作した後、ヨーロッパでの個展、グループ展への参加が続いていた作家にとって2年ぶりの日本での発表となります。渡部は『私の作品にとって最も大切なことは「想い出」や「記憶」をヴィジアル化することです。』と言います。誰にも平等にある「物理的時間軸」と、その人の想いによって長くなったり短くなったりする「感覚的時間軸」。今回の作品はその2つの時間軸を同じ場所に重ねることにより、自分自身の中の他者の在り方をよりいっそう強く感じさせます。やがて薄れて消えていってしまう記憶、その儚さがより美しさを印象づけ、存在への想いは消え去ることのない永遠へと昇華されます。作品から感じる印象に切なさが伴うのは、過ぎ去ったはずの「時間」を留めようとすることへの共感と、それを取り戻すことへの諦めが入り混じり、自分の中にある過去の時間への想いが憧憬となって蘇ってくるからかもしれません。
展示は映像作品とドローイング、ミクストメディアなど