「人間の値打ちだけしか字は書けるものではないのです。字というものは人間の価値以上には光らないものです」と魯山人は語りました。この言葉をたどり、今日まで敬重されている書の作者に思いをめぐらせれば、なるほど宗教、芸術、あるいは政財界において偉業を成し遂げた人々の名前が浮かびます。その文字は味わいに秀で、言葉は示唆に満ちて、人々の心を惹きつけます。なかでも画家の書は、書道の規格にとらわれない大らかさ、奔放な個性に彩られ、各人の画風を彷彿とさせます。
本展では当館収蔵品を中心に、約100点の近代画家をはじめ各界に名を残す人物の書や墨彩画を展観、生き生きとした書画の世界に触れていただこうとするものです。日本人が筆をとることが少なくなった昨今、書の魅力を再認識していただきたいと存じます。
【おもな出品作家】
朝井閑右衛門 梅原龍三郎 雲道人 川上冬崖 岸田劉生
北大路魯山人 木下利玄 草野心平 熊谷守一 小杉放庵
志賀直哉 中川一政 長渕 剛 中村不折 平福百穂
藤島武二 藤田東湖 武者小路実篤 ほか