梅原龍三郎(1888~1986)は、日本の近代洋画を代表する画家としてその名を広く知られています。京都に生まれ、浅井忠の教えを受けた後フランスに渡り、ルノワールに師事、帰国後は二科展や春陽会、国画会の中心として活躍しました。梅原は、80年におよぶ画業のうち、足掛け40年は伊豆を制作の舞台としました。作品制作のため熱海を初めて訪ねたのは28歳のとき。やがて韮山の洋画家柏木俊一から伊豆の景勝地を紹介され、たびたび滞在するようになりました。梅原はルノワールの影響を脱して、自身の画風を確立しようと模索する中、伊豆の豊かな自然と出会い、天性の色彩感覚を解き放ちました。そこに琳派や浮世絵などわが国伝統の描法を取り入れて、夕闇迫る江ノ浦の入り江、緑深き熱海の画室で描かれた裸婦、朝日に染まる大仁の富士など、彩りと装飾性に富んだ無類の作風を開きました。
このたび佐野美術館の創立40周年および梅原の没後20年を記念し、代表作約80点を紹介いたします。伊豆で生まれた豪放にして華麗なる梅原の世界をどうぞご堪能ください。