私たちはいろんな素材で布を作り、利用してきました。たとえば、麻やからむしといった草の繊維を巧妙に取り出したり、シナのような樹木の皮の薄い層を剥ぎ取りもしたのでした。一方、棉の実についているふわふわの綿毛を集めたり、羊をはじめとする動物の毛を刈り取ったり、そして昆虫である蚕の繭を使ったりしてきたのです。
今回の展覧会では、まず、布ができあがるまでの「素材」から出発します。さらに、できあがった布が「縫う」という作業を経て変身することにも注目します。主として日常は女性の手で行われる「裁縫」というものと、それをとりまく世界。裁縫の技術を教える様子を描いた色鮮やかな絵馬をはじめ、小さなエピソードに彩られた品々を紹介しながら、その入り口をちょっとだけ覗いてみることにします。
つぎは縫い上げられたさまざまな衣服。ここでは仕事着など、素材や形など地域の特徴をよくあらわしたものをご覧いただきます。刺し子、裂織・・・・。そして繰り返しつぎをあてた布。そこには心を奥底から揺さぶるような「美しさ」があります。
展覧会をとおしていろんな「表情」を見せてくれる「布」たちをぜひお楽しみください。