「お大師さん」と親しみと尊敬を込めて呼ばれる弘法大師空海。774年に讃岐国(現在の香川県善通寺市)に生まれ、官吏養成の大学に進んだ空海は、やがて仏門に入り、山林修行に身を投じたのちに、仏法を求めて留学僧として中国(唐)に渡ります。そこで正統の密教を受け継ぎ、人びとの救済と国の安穏のために、帰国して体系的な真言密教の世界を確立しました。
空海は密教思想を表すために欠くことのできない、曼荼羅をはじめとする仏画や経典、法具などを中国から請来し、さらにそれらを日本において大きく開花させる礎を築きました。そして高野山を真言密教の修禅の道場と定めますが、この地はまた、弘法大師空海が入定した聖地としても重要な意味を担い、宗派を超えたあつい信仰を受け入れながら長い歴史を刻んできたのです。
このたびの展覧会は、高野山真言宗総本山金剛峯寺をはじめ、各子院、高野山文化財保存会、高野山霊宝館の全面的な協力を得て、同地に蓄積されたかけがえのない至宝の中から貴重な作品群を選りすぐり、旭川と札幌を結んで大規模に公開するものです。この千載一遇の機会に空海の偉大な人間像とその精神に触れ、宇宙的視野をもち、多様な価値観を包みこむ曼荼羅の世界を体感していただくとともに、第一級の仏教美術の精華をぜひご堪能ください。
<展示替えのお知らせ>
作品保存のため、10月3日(火)より一部作品が入れ替わります。前期・後期の両方をご覧になる場合は、お得なリピーター割引をぜひご活用ください。