棟方志功(1903-1975)は青森県の出身です。
1924年に画家を志して上京。はじめは油絵を描いていましたが、川上澄生の版画に刺激を受けて、木版画を始めました。
その後、柳宗悦、河井寛治郎、浜田庄司らの民芸運動の後援を受け、1938年〈善知鳥〉が新文展で版画として初めて特選を受賞します。
戦後には〈二菩薩釈迦十大弟子板画柵〉で1955年第3回サンパウロ・ビエンナーレのメタルヒカ・マタラッツォ賞、翌56年ヴェネツィア・ビエンナーレの国際版画大賞を受賞するなど国際的な評価を得ました。1970年には文化勲章を受賞しています。
今回紹介する版画集〈耶蘇十二使徒板画柵(不来方頌、大恩世主十二使徒板画鏡柵)〉は、仏教の世界をテーマにすることが多い棟方が、キリスト教の12使徒を題材にした12点組の木版画です。
1953年の日展入選作で、56年のヴェネツィア・ビエンナーレにも出品しています。キリスト教を題材としているものの、宗教的な意味合いはなく、ただ人間の姿を作ったものです。棟方は自らの制作を「版画」ではなく「板画」と呼んでいますが、これは彼が板の元々ある性質を大切にしようとする気持ちを反映しているものです。この作品も、使徒の個々の名前はあとで付ければよいと考え、まずは板にまかせて制作されたものです。