狂言は、中世日本の庶民生活をユーモアたっぷりに描いたドラマです。地方の下級武士とそれに仕える太郎冠者、次郎冠者など、どこにでもいるような親しみやすい人々が登場し、日常生活における人間のちょっとしたわがままやずるがしこさ、なまけ心やそそっかしさなどが、コミカルに演じられます。武士の略礼装である素襖、武士の使用人が着用していた肩衣や半袴など、麻製の染模様が中心で、豪華な絹織物である能装束とは正反対の趣を持っています。江戸時代になりますと、喜劇性が直接装束にデザインされるようになり、大胆でカラフルな染模様で遊ぶようになりました。厳つい顔ですらどこか面白可笑しい狂言面とともに、狂言のよそおいをお楽しみください。