江戸時代前期、明の禅僧・隠元らの来日とともにもたらされた中国書法(唐様の書)は、これ以後、僧侶や儒者文人らを中心に大いに広まりました。この特集陳列では、唐様の時代的展開を館蔵品と寄託品から紹介するとともに、江戸時代中期の池大雅と彼に関わる人々の書跡を展示し、唐様の書の流れと彩りをご覧いただきます。
なかでも注目作品は、江戸時代後期以来所在不明で昨年巷間に出現した池大雅筆「水流帖」(原本)です。杜甫や李白の詩から撰んだ五言詩三十六句を篆隸楷行草の各書体で書き分け、淡墨で折帖に揮毫したもので、晩年五十代の筆と推定されます。詩情と筆致が一体化し、悠揚迫らぬ書風は、自然体を志向した生き様と、文人の書の高みを思わせます。