日本で初めて、20世紀ポーランド写真の全体像を紹介いたします。
ポーランドは、ショパンを生んだ音楽の国、アンジェイ・ワイダ監督ら映画の国、演劇の国、ポスター等グラフィックデザインの国として知られています。しかし前衛美術運動が絶えず続けられてきたことは、意外に知られていないかもしれません。
長い分割時代を経て、第1次大戦後に独立を回復したポーランドでは、1910年代から前衛美術運動が開花し、ロシア、ドイツとの交流のなかで実験的な写真作品が数多く作られました。第二次大戦後は社会主義政権下にもかかわらず前衛的な美術活動が続けられ、1970年代にコンセプチュアル・アートと連動した先鋭的な写真制作が全盛となります。
一方で、アウシュビッツに代表される数多くの死、線禍、さらに民主化をめぐる社会の変貌を記録してきた、ポーランドのドキュメンタリー写真が果たしてきた役割も重要です。
そこには歴史の屈曲のなかで磨かれてきた独自の抵抗精神が読み取れるでしょう。
本展は、ポートランド第二の都市にある、国立ウッチ美術館所蔵の写真約3000点のなかから、ポーランドの歴史と文化をじかに伝える写真作品およびヴィデオ作品約180点を展覧し、その奥深い魅力を初めて紹介するものです。