本物の植物を見間違うほどに精巧な木彫作品で注目を集め、国内外で目覚しい活躍を続ける須田悦弘(1969-)。
須田が好んでモチーフとしてきたのは、美しく咲き誇る薔薇や百合、チューリップといった花から泰山木などの樹木の枯れ枝や落ち葉、また何気なく路傍に生える雑草といった植物にまで及びます。朴の木を削り彩色が施された木彫作品の持つリアルさという特徴はもちろんですが、欠かすことのできない要素に作家が展示空間をも含めて作品としていることを挙げることができます。1993年、初個展となった「銀座雑草論」で須田は一躍注目を集めます、自らリヤカーを引き、銀座のパーキングメーターに千利休の茶室に触発された展示空間を「駐車」し、雑草一輪が金箔貼りをされた中に活けられていました。このように自らが新たに展示空間を創り出すという場合と、既存の与えられた空間でいかに展示するかという場合が見られます。後者の場合では、須田が熟考した展示は、時に作品がどこに展示されているのか観客が探さなければならないほどです。
今展では建築家・谷口吉生の設計による建築空間をいかに須田が見立てて作品に取り込んでいるかを体験することにより、無いようで在るということを知覚するとともに須田の手による精緻な作品の感動がさらに深まることでしょう。