優しい風合いを持つクレパスは、クレヨンとパステルを素地として、1925(大正14)年に日本で発明された描画材です。学校教育に取り入れられていることから、子ども用の画材という印象を持っておられる方も少なくありません。しかし誰もが手にしたことがあるこのクレパスを使って、巨匠たちは独自の絵画世界を展開しました。
クレパスは発色がよく、さまざま技法が可能です。重ね塗り、混色、盛り上げなど、油絵と同じようなタッチでも描けるため、戦後は、高価な絵の具に手が届かなかった画家たちに親しまれました。本展では、文化勲章受賞作家や日本芸術院会員など戦後の洋画壇を彩った画家たちによる1950から60年代に描かれた作品を中心に、クレパス画の名作を展示いたします。
また本展開催にあたって描かれた、現代洋画壇を代表する画家たちの新作を、併せて紹介いたします。120余名の個性あふれる画家たちが描いた、約200点の作品はそれぞれ、力強く、あるいは繊細に、クレパスが子どもだけの画材ではないことを感じさせてくれるでしょう。子どもから大人まで楽しめる、今まで知らなかったクレパス画の世界を、心ゆくまでご探訪ください。