19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの美術界を席巻したアール・ヌーヴォーの時代、そしてその代表的な芸術家エミール・ガレ(1846~1904)の存在はガラス工芸の歴史のなかで特筆すべきものといえます。ガレは、産業革命による技術的な発展や大量消費時代の到来による大量生産の需要が強く求められる時代に、企業経営者として敏感に反応しながらも、芸術家としての節を曲げることなく、そのたぐいまれな芸術センスをいかんなく発揮しました。万国博覧会での名声、月光色ガラスやマルケトリなどの新技法の開発など、ガレを評価するポイントは多岐にわたります。また、この頃ヨーロッパで大流行した“ジャポニスム”の代表的芸術家であることもあって、日本におけるガレの人気は今日においても衰えることを知りません。
そのガレの生誕160年目にあたる今年、あらためてその事跡をふりかえる展覧会を、国内でも有数のガレ作品を収蔵する4つの美術館の特別協力を得て開催する運びとなりました。詩情あふれるガレ独特の世界をお楽しみ下さい。