むかしむかし、ヤーコプとヴィルヘルムという仲のいい兄弟がありました。
二人は、古い資料や、お年寄りなんかが話して聞かせる
あちこちのいろいろなお話を苦労してあつめ、
それを世の中の人が読めるように本にしました。
世にいう『グリム童話集』には200以上の話が収められています。みなさんはそのうちのいくつぐらいをご存知でしょうか。「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「シンデレラ(灰かぶり)」「ブレーメンの音楽隊」「白雪姫」....そもそも「グリム童話」とは、19世紀初頭に学者であり言論人だったグリム兄弟が、収集し体系的にまとめあげたドイツ各地の民間伝承や口承文学なのです。こんにちの我々が、気が付いたらいつのまにか知っていたあれらの話も、もとを辿れば1810年代に兄弟によって出版された童話集『子どもと家庭のメルヒェン集』がその源泉なのです。
世界中で語られ、欧米では聖書に次いで広く読まれている書物とさえいわれるグリム童話。親から子へ、祖母から孫へ、教師から生徒たちへ、国境をこえ世代をこえ、いまなお人びとに夢を与えつづけているかずかずの物語。これも我々人類が共有できた無形のさいわい、貴重な財産の一つといってもいいのではないでしょうか。
本展は、カッセル(ドイツ)のグリム兄弟博物館が所蔵する、メモリー・オブ・ザ・ワールド(文献の世界遺産)に認定された書籍資料をはじめ、19世紀から現代にいたるグリム童話の挿絵や復刻本、兄弟の愛用品や直筆の手紙などの資料約290点を展示し、グリム兄弟の生涯やその業績をたどります。