この度、姫路市立美術館では熊谷守一(くまがい もりかず)の展覧会を開催いたします。熊谷は1880(明治13)年に岐阜県に生まれました。東京美術学校(現・東京芸術大学)西洋画科で藤島武二、黒田清輝の指導のもと青木繁や山下新太郎らとともに学びます。卒業後は樺太調査隊参加、郷里での山中生活を経て、1915(大正4)年に再び上京します。二科会を作品発表の舞台とし、1943(昭和18)年までほぼ毎年二科展に出品しました。戦後は東京都豊島区千早町の小さい家からほとんど外出することもなく、身近な生き物などを透徹した観察眼で見つめ、それらを単純化して描いた独特の画面をつくり上げます。極めてシンプルな構成でありながら、見るものをはっとさせるような味わい、趣に満ちた作品は多くの文化人、経済人を魅了し続けました。なかでも、本展の出品作品を収集した木村定三氏とは1938(昭和13)年に出会って以降40年もの間、単なる画家とコレクターという関係を越えた深い親交を保ちました。
本展では、木村氏より愛知県美術館に寄贈された熊谷守一作品の中から約170点を展示いたします。これまでも多くの人々に親しまれてきた「猫」をはじめ、飄々とした魅力のあふれる油彩画、日本画や書など多才な創造世界をご紹介いたします。是非、この機会に熊谷の純粋で自由な精神から生み出された、独自性豊かな作品に触れていただきたく存じます。
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