清方が、新春を題材にした作品の中で、「松のうち」は、日本髪を結い、振り袖を着た女性が、羽根と紅梅模様の羽子板を手にし、新年の風情が描かれています。
「ためさるゝ日」(右幅)は、江戸時代に長崎丸山の遊郭で行われていた踏絵に着想を得ています。
当時、踏絵は正月の行事として、遊女たちが馴染みの客から贈られた「絵踏衣装」をまとい、華やかな雰囲気が漂う中で行なわれていました。
また、明治から大正期、挿絵画家として活躍していた頃には、雑誌の新年特別付録として口絵や双六も手掛けていました。雑誌『婦人世界』に掲載されてた「元日の朝」(口絵)には、赤々とした炭を火鉢に入れている女性の姿があります。当時の一流文芸誌『文藝倶樂部』の口絵には、女性が羽子板や羽根、破魔矢を手にしている「春を待つ」や鏡餅をこしらえている「餅むしろ」、「時代美人風俗双六」もあります。
「鉢植の梅松」(試筆)などの作品をはじめ、書初めとして大小の丸をふたつ重ねた「宝珠」、『文藝倶樂部』の口絵や双六とともに、名匠・永井周山の押絵羽子板「明治風俗十二ヶ月」など、新春の雰囲気をお楽しみいただきます。