優雅でおだやかな女性像、愛くるしい小動物の木彫や観音立像、乾漆作品など、千村士乃武(1910年木曽福島町生まれ)は東京美術学校に学んだ彫刻家として、20代の前半から帝展入選を果たし、若くしてその才能を評価されました。戦時中に故郷に戻ってからも日展への出品のほか、東京芸術大学教授、石井鶴三の木彫「島崎藤村像」に助手として関わり、石井の招きで法隆寺金堂修復に参加するなど活躍します。惜しくも1957年に亡くなるまで、近代から現代につながる彫刻の可能性を探るべく、木曽で創作活動を続けました。しかし没後は作品をまとめて見る機会が少なく、その作風を明らかにすることができませんでした。本年は作家の50回忌にあたることから、37年ぶりに多くの個人蔵の作品と、通常は非公開の仏像、合わせて30点と資料などを公開いたします。