和田誠は、週刊誌『週刊文春』(1977年~)の表紙のイラストレーターとして、映画の名セリフをテーマにした7冊からなるエッセイ『お楽しみはこれからだ』(1975年~1977年)の著者として、映画『麻雀放浪記』(1984年)の脚本家、監督としてなど、幅広い活躍をしています。
この展覧会は、その彼の絵本の世界に焦点をあてた初めてのものです。
その原点にグラフィック・デザイナーとしての顔を持つ和田誠の絵本には、生粋の絵本作家とは一味ちがうアイデアも展開されています。色指定や特色三色刷りといった印刷技術までも技法として取り入れる趣向が凝らされているのです。そこに私たちは、絵本が表現できる無限の可能性を知ることになるでしょう。
本展は、出版から30年たった今も、アニメーションにも似た場面展開を、本を上下に開くという着想で成功させた『あな』(文:谷川俊太郎/1976年)をはじめ、『密林-きれいなひょうのはなし』(文:工藤直子/1975年)、『あめだまをたべたライオン』(文:今江祥智/1977年)、『びりのきもち』(文:阪田寛夫/1988年)、『旅』(1991年)、『ねこのシジミ』(1996年)、などの15冊の絵本の原画に、『マザーグース』~(訳:谷川俊太郎/1981年)の挿絵、書籍資料など約170点で構成されています。